会社が生き残る確率は?設立・起業・開業の後のこと

アメリカの起業後の生存率とは?

起業自体が目的になってしまっていては本末転倒ですが、ドラマは起業後に始まるのです。そう、展開は結婚に似ていますなぁ。離婚率ならぬ、企業の存続率をみてみましょう。

アメリカの場合、新しく起こされたビジネスのうち90パーセントは最初の5年以内に失敗し、生き延びた10%のうち90%セントは10年以内に失敗する、のだそうだ(「金持ち父さんの起業する前に読む本」を参照)。この数字、かなり低いですねぇ。Entrepreneuship(起業家精神)が根付いているアメリカゆえに、多くの会社が生まれ、淘汰されるのでしょうか?ロバート・キヨサキさん、この数字どっからの引用でしょう?

日本の創業・開業起業の生き残る確率は?

さて、ところかわって日本ですが、「起業バカ」というセンセーショナルなタイトルで本を書かれた渡辺仁さんによると、起業に成功した人は1580人に一人という数字を挙げています。さて、この場合の「起業に成功する」とは、起業した企業のうち上場をはたした企業および上場予備軍、なんだそうです。起業の成功を上場や企業規模の拡大をあげられる方もいらっしゃいますが、それ以外を目的にされる人も大勢おられると思います。たとえば、「経済的自由の確保」、「ビジネスアイデアの実現」、「時間的自由の創出」、「社会の役に立ちたい」、などなど。それぞれの目的を達成しつつ、そのプロセスを楽しみ、自分が求める生活水準のキャッシュをうみす、というのを起業の成功とすれば、成功確率はもう少し高くなるのではないでしょうか。

国民生活金融公庫研究所の「新規開業企業を対象とする日本初のパネル調査結果」によると、同公庫の融資先のうち2001年に開業した2,181社(個人事業所も含む)のうち2005年における存続率はおよそ82.7%。思ったより高いですねぇ。でも、業種別にみていくと、廃業率が最も高いのが飲食店(24.1%)、ついで小売業(22.3%)。この調査時期は、いざなぎ景気をぬく景気回復期に該当するだけに、不景気時にはこれより低い数字がでる可能性が大きいですが、とりあえず8割の生存率!はなかなかの成績ですね。ただし、廃業率の高い業種もありますので、その業種で起業されようとされる方、最新の注意を払う必要がありますぞ。

生存率の低い業種 ワーストランキング!

Worst 1. 個人教授所     65.5%

(カルチャー教室、語学教室、フィットネスの類)

Worst 2. 酒場・ビヤホール  71.1%

Worst 3. 自動車小売業   83%

やはり、教室系は競争が激しいのでしょうか? 飲食店というのはわかる気がしますが。私が住むとある地方都市でもグルメ通りとよばれる界隈は、飲食店の参入・退出が結構激しいです。

反対に、生き残る確率の高い業種は、以下の通りです。

生存率の高い業種 ベストランキング!

前述の調査の内企業数の多い上位10業種の中のランキングです。

No.1 一般診療所         98.9%

No.1 歯科診療所         98.9%

No.3. 美容業            97%

No.4 事業所向け専門サービス 95.7%

No.5 療術業             94.5%

やはり手に職をつけて独立開業する形態は、廃業率が低く、手堅い業種といえそうですね。

生き残っている企業の現実

生存率で喜んでいてはいけません。以下は生存した企業・事業所のうち起業後1年~5年後の収支です。

存続しているとはいえ、1年目で赤字が48.5%、2年目で31.9%、3年目で27.1%に減るものの、4年-5年でもほぼ3割が赤字で運営しています。

起業後のデータ

出典:国民生活金融公庫研究所、2006年 「新規開業企業を対象とする日本初のパネル調査結果から」

さて、この数字をみて、でもやってみよう!と思う、チャレンジ精神旺盛な貴方。貴方なら軌道にのせらるはずです。あとは、どのようにのせていくのか、具体的に考え,,、実行するだけですね。

人的責任・リスクを負う

段々事業が軌道に乗り出すと、徐々に人手が足りなくなります。事業規模の拡大にともない、経理・労務など事務処理などの負担軽減、営業、製造、販売などの各機能に人が必要になってくるかもしれません。するとサラリーマン時代には経験しなかった、「人を雇用する」責任が生じます。これが脱サラ組だとなかなかマネージするのが難しいところです。どのように採用するのか、契約条件は?、各法律は?など細かいことにも気を払い、従業員が気持ちよく働ける職場環境の維持や、はたまたセクハラ対策も考えなければなりません。さらには、業績が好調時ならいいけれど不調になればリストラをしなければならない側になります。考え方によっては、リストラする側よりリストラされるほうが心苦しくないかもしれません。

対策:

  • ともかく、業績が安定していない間、あるいは人事・労務に疎い間は、アウトソーシングを考える。例えば派遣会社にスタッフの派遣を依頼することをまず検討すること。派遣会社のマージンが高いと、ここでケチってはいけません。派遣会社では、各職員の健康診断、有給、雇用契約、セクハラ対策など、システマティックに対応していて、起業したての会社にとっては頼れる存在です。万が一派遣先の誰かがセクハラした場合に備えて、派遣スタッフの相談専用ラインを設けていて、なるほどなぁ、これぐらいしないと会社運営の責任ははたせないな、と勉強しました。ちなみに私の会社では女性の派遣スタッフさんにきていただいていますが、セクハラの疑いがかかるかもしれない唯一の男性は社長。ちなみに、私の夫なので、複雑な気もしますが、大事なことです。
  • それでも職員を採りたい場合、採用には時間と手間をかける。会社理念や社長の方針をしっかりと説明し、共感する人材を採用すること。自社の職員を採用したいならば、人事や労務の法制などしっかり勉強し(あるいは専門家に委託相談して)、業績低迷時に自分がスタッフを切らなければならないことを想定し、責任を認識して採用すること。
  • 雇用条件を、事業レベルとマッチさせること。1年後の業績がかなりあやしければ、年単位の契約も考える必要あり。終身雇用として、彼・彼女の人生を背負えるかどうか、肝に銘じること。
  • 従業員満足を常に考えること。給与や福利厚生だけでなく、配属先の配慮、仕事の自由裁量度、研修制度、職場環境、職場の人間関係マネージメント、職場内のコミュニケーションの円滑化、など常に考えていくことです。得にサービス業を営業される方は、お客さんが接するのが従業員となるので、常にこれを考えていく必要があります。

従業員満足を優先する経営の参考書は「本を読む」サイトに紹介してあります。

事業の立ち上げ時は、忙しくなる。家庭とのバランスがとりにくい

事業を立ち上げるときは、未知なことに足を踏み入れる場合が多く、やることがいっぱいです。開業準備や、取引先や顧客の開拓、経理や資金繰り、税理士などの専門家の選任、人の採用・訓練など。あー、やるべきことがいっぱい!で焦燥感にかられ、実施、忙しくなりがちです。

対策:

  • シングルの方は体に気をつけて。体が資本ですから。睡眠時間は確保しましょう。寝ないと結果的に非効率です。
  • また家庭もちの方は、健康以外に、家庭という人間関係のメインテナンスを忘れずに。

起業前に家族とよく話しあい、協力体制を固めるということが非常に重要となります。起業本を読む限りでは、家族に反対されてまで起業すると、ビジネスと家庭両方失敗することが多いようです。また、家族の方との接点を意図的につくりだし(朝ごはんはいつも一緒、とか)、かならず互いのコミュニケーションの場所・時間をみつけだしましょう。夫婦で共同運営すると、ともかくいっつも一緒なので、この意思疎通の風通しを確保するという点では問題が生じにくいのですが、いったん仕事上か家庭上で関係がコケだすと、両方ともダメになっていくという悪循環にはまりますので、この辺が難しいところでしょうか。

調達資金の責任・リスクを負う

資本金1円が法的に許される時代といっても、会社設立後、即座にキャッシュが生じるような事業でない限り、現実にはあらかじめある程度の資金確保が必要です。設備投資、人材投資、キャッシュインとキャッシュアウトのタイミング調整のための運転資金など、ともかく最初からお金が必要となるのです。

投資資金が少額で、失敗してもその分あきらめがつく程度のリスクであればよいのですが、自分の手におえないならかなりのリスクです。出資者がいなく、無理して金融機関からの借入金をして資金調達をする場合、金融機関は通常個人保証を要求し、事業が失敗すれば無限責任の債務だけが残るという結果に…。

対策:

  • スモールビジネスならば資本金は自己資金で。ビッグビジネスならば、資本金や開業資金を個人保証つきの融資に頼るのはハイリスク!です。
  • 出資者を説得できないビッグビジネスのビジネスプランンでの創業はやめる。出資者の賛同を得られるまでビジネスプランを再考しよう。あなた個人の支援者である親・親類・友人以外の出資者は、経済的合理性を考えて投資しています。その反応を素直に受け止め、安易に融資に飛びつかないこと。
  • 創業前に数多くの失敗の経験をつもう。創業後も事業の失敗も想定し、リスク管理をしよう。