調達資金の責任・リスクを負う

資本金1円が法的に許される時代といっても、会社設立後、即座にキャッシュが生じるような事業でない限り、現実にはあらかじめある程度の資金確保が必要です。設備投資、人材投資、キャッシュインとキャッシュアウトのタイミング調整のための運転資金など、ともかく最初からお金が必要となるのです。

投資資金が少額で、失敗してもその分あきらめがつく程度のリスクであればよいのですが、自分の手におえないならかなりのリスクです。出資者がいなく、無理して金融機関からの借入金をして資金調達をする場合、金融機関は通常個人保証を要求し、事業が失敗すれば無限責任の債務だけが残るという結果に…。

対策:

  • スモールビジネスならば資本金は自己資金で。ビッグビジネスならば、資本金や開業資金を個人保証つきの融資に頼るのはハイリスク!です。
  • 出資者を説得できないビッグビジネスのビジネスプランンでの創業はやめる。出資者の賛同を得られるまでビジネスプランを再考しよう。あなた個人の支援者である親・親類・友人以外の出資者は、経済的合理性を考えて投資しています。その反応を素直に受け止め、安易に融資に飛びつかないこと。
  • 創業前に数多くの失敗の経験をつもう。創業後も事業の失敗も想定し、リスク管理をしよう。

「予想外」を予想しないリスク

このブログは、元々固定したページで作っていた「起業支援」サイトの内容を、ブログに構成し直して作り直すつもりでいました。そうこうしている内に、東日本大震災が起きてしまい、原発事故が発生しました。原発の関係者は口を揃えて「予想外のこと」だと言います。

この「予想外」を少し考えることから、このブログを始めたいと思います。

「予想外」で思い出すのは、トヨタの車がアメリカで暴走し、死亡事故を起こした事件です。これでトヨタは大損害をこうむりました。事故が起きた原因は、運転席の下に敷かれた形の合わないフロアマットがアクセルペダルに引っ掛かったためだったそうです。これはもちろん、トヨタで自動車の設計をしている人たちにしてみれば予想外。この予想外が大損害を引き起こしてしまい、結果、トヨタの経営陣は右往左往。

一方電子制御システムに問題があるのではないか、と指摘があり、徹底的に調査がされましたが、こちらは「シロ」の判定が出ました。つまり、技術的に「予想内」のことに対しては徹底的に対応がなされている、ということになります。

この原発とトヨタの「予想内」と「予想外」、非常に構造が似ていると思います。これが日本に特徴的な考え方、と言い切るまでの自信はないですが、かなり良く見られる考え方とは言えるかもしれません。

すなわち人智で予想可能な範囲のことは徹底的に考えて、技術的な手を打つ。ところが、人智で予想不可能なことがある、つまり他人の思いがけない行動とか、自然とか、そのことを忘れて「十分やっている」と思いこんでしまう。

当社は政府開発援助(ODA)からの売り上げも一部あります。今回の震災でODAの減額はほぼ確実なものとなっており、予定していた仕事が入らなくなる可能性が高くなってきました。さて、これは「予想外」のことか「予想内」のことか、どちらでしょうか。

震災はもちろん予想しておらず、従って、いきなり仕事が来なくなるということを予想していたわけではありませんから、その意味では「予想外」です。しかし、その一方で、ODAは政府が決めるものであり、当社のコントロール下にないものであることは十分承知して起業しています。

つまり、形の合わないフロアマットを敷くユーザーとか、いきなり動く地殻とかと同じで、自分たち以外の誰かが勝手に一方的に決めるものは、こちらの都合にかかわらずいきなり変化することがある、ということは予想しています。

「キツネとハリネズミ」というたとえ話が西洋にはあるそうです。こちらのビジネス系ブログに簡単な解説があるので引用してみます。

「キツネはハリネズミを捉えようと知恵を駆使し、複雑な作戦をたくさん編み出しますが、ハリネズミに出来ることはただ一つ、攻撃されたときに体をまるめるだけ。キツネはこのシンプルだけど恐ろしく効果的な作戦の前に成す術もないというものです。」

つまり自社の強みは何か?絞り込むということ。ビジネス・マネージメントではよく言われることですし、平時には全くその通りかと思います。つまり「平時が続く」という想定であれば全く同意です。

これに対して、ノーベル経済学賞をとったアマルティア・センの「貧困と飢饉」には、飢饉という緊急時に生存を保証したのは「エンタイトルメント」であった、としています。エンタイトルメントというのは、緊急時などに「頼る先」のことで、特定の人や家族が持っている頼る先全部を「エンタイトルメント・セット」と呼びます。

エンタイトルメントは個人の食糧調達の話ですが、例えば震災や津波、原発事故の被災者の方々が故郷を追われてしまった後に、生活をどう成り立たせるかは、まさに頼る先がどれくらいあるかどうかによって異なってきます。

一方企業は?と考えると、もちろん例えば立て直しに資金的な支援をしてくれるところがあるか、というような意味ではエンタイトルメントの考え方も有効ですし、私自身は別の考え方も持っています。

つまり、「自社の強み」自体を「多様性」に求めることです。

平時に機会をどれくらい持っているかを「オポチュニティ・セット」と呼びます。一芸に秀でることは、つまりこのオポチュニティ・セットの中から絞り込んでいく作業を伴います。それが一般的に企業が行うことです。それが一般的に有効であることは、他分野に手を出してしくじった企業が多いことからも証明されていると言えます。

では、当社のように、小さな企業の場合でも同じでしょうか。私自身は「異なったロジック」が機能しうると考えています。つまり、豊かなオポチュニティ・セットを持つことを「一芸」とする、ということです。例えば別のブログに書きましたが、著書の印税を会社の収入に入れています。

大きな企業なら、相当のシェアや売り上げを出さない限り、企業の維持ができません。でも、零細であれば、なんとか社員の給料分を稼げば生き延びることができます。ニッチ・ビジネスをうまく組み合わせれば、平時にはオポチュニティ・セットであるものが、緊急時にはエンタイトルメント・セットとして機能するかもしれません。

大きなニッチは探すのが困難、当社のようなリソースが限られている零細には縁遠い世界です。でも小さなニッチであれば、商品のニッチ、地理的なニッチ、いろいろなニッチを組み合わせることによって、比較的多く見つけることが可能です。

多様性自体を強みにして、小規模なセルが繋がって拡大して行く、売上としてはさほど大きくならないけど、非常に強い、そのようなビジネスモデルを考えています。